『ダンスダンスダンス』を読み(74)

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温度は急激に低下していた。この寒さには覚えがある、と僕は身震いしながらふと思った。骨にしみこむような湿気を含んだその冷気を、僕は前にも何処かで一度経験していた。遠い昔、遠い場所で。でもそれがどこだったか思い出せなかった。もう少しで思い出せそうなのに、どうしても駄目だった。頭の何処かが麻痺しているのだ。麻痺して固くこわばっている。

カタクコワバッテイル。

「もう行った方がいいね」と羊男は言った。「ここにいると、体が凍りついてしまう。またそのうちに会えるよ。あんたが求めさえすれば。おいらはいつもここにいる。おいらはここであんたを待っている」

彼は足をひきずりながら廊下の曲がり口まで僕を送ってくれた。彼が歩くとあのさら?さら?さら……、という音がした。それから僕は彼にさよならを言った。別に握手もしなかったし、特別な別れの挨拶もしなかった。たださよならと言っただけだった。そして暗闇の中で僕らは別れた。彼は狭くて細長い彼の部屋に戻り、僕はエレベーターの方に向かった。僕がボタンを押すと、エレベーターはゆっくりと上にあがってきた。そして音もなくドアが開き、明るい柔らかな光が廊下にこぼれて僕の体を包んだ。僕はエレベーターの中に入り、しばらく壁にもたれてじっとしていた。ドアが自動的にしまったが、それでも僕はじっと壁にもたれていた。

さて、と僕は思った。でも「さて」のあとが続かなかった。僕は思考の巨大な空白の真ん中にいた。どちらに行っても、何処まで行っても空白だった。何にもいきあたらなかった。羊男が言うように、僕は疲れて脅えていた。そして一人ぼっちだった。森の中に迷いこんだ子供みたいに。

踊るんだよ、と羊男が言った。

オドルンダヨ、と思考がこだました。

踊るんだよ、と僕は口に出して復唱してみた。

そして十五階のボタンを押した。

十五階でエレベーターを下りると、天井に埋めこまれたスピーカーから流れるへンリー?マンシーニの『ムーン?リプァー』が僕を出迎えてくれた。現実の世界――僕がおそらく幸せになることもできず、おそらく何処にも行くことのできない現実の世界。

僕は反射的に腕時計に目をやった。帰還時刻は午前三時二十分だった。

さて、と僕は思った。さてさてさてさてさてさてさてさて……、と思考がこだました。僕は溜め息をついた。

  温度在急下降。我的身体在抖突然想到一点:曾遇到的寒冷。有湿气的刺入骨内的冷气,在以前在什地方曾体。在很久以前,在一个很的地方。具体在什地方?我想不出来。稍微也能想出一点来但无如何没有法。中什地点在麻痺之中。麻痺同越来越僵硬。

  越来越僵硬。

  “是?走好。”羊男。“呆在里,身体就会僵。如果有什要求的,会在那里面。我一直呆在里。我在里等着。”

  他着腿把我送到走廊拐弯的地方。他一走路就生沙、沙、沙……的声音。之后我他再。没有握手,也没有特地客套。也只是了声再。接着在?暗中告。他回到了狭窄的自己的房,我朝着梯方向走去。按下按后梯慢慢升上来。没有声音梯打了,明亮温和的光在走廊中罩着我的身体。我走梯,朝壁上死死地靠了一会儿。自上,我依然靠在壁上。

  “那,”我一想。在之后再也没有想。我在巨大的空白思考的之中。往里去,到什地方都是空白。什都走到了尽。正如羊男所的那,我累了我害怕了。而且是狐的一个人。就像在森林中迷路的孩子那。

  跳舞。羊男。

  跳舞。我的思考反一下。

  跳舞。我重地出口。

  接着按了十五的按。

  在十五我下了梯,安装在天棚里的喇叭播放着へンリー?マンシーニ的“ムーン?リプァー”来迎接我。的世界我恐怕得不到什幸福,恐怕什地方也不能去的的世界。

  我条件反射地把目光投到了手表上。来的刻是凌晨三点二十分。

  那,我想。那那那那……,思考又反起来。我一口气。